第四十四回~穴川寄席振り返り「一番ウマいとき」

 こんにちは。

 先日、知り合いのおじいさん、おばあさんに誘われて、タケノコを掘ってきた鶴蔵です。

 小学生ぶりのタケノコ掘りでした。

 

 大人になると「欲」がでますね。

 

 せっかく収穫するなら、できるだけ柔らかいものを。

 しっかりと周りを掘って、根本からきれいに取りたい。

 

 私は2時間で5本ほど。

 一方で、一緒にいたおじいさん達は1人20本。

 もう、大小もオスもメスも関係なく、とにかくガンガン収穫していました。

 

 そして、うちに帰ってタケノコを食べて気づきました。

 

 「全部、ウマい。」

 

 どうやらこの竹林、もともと畑だったらしく、土がいいのだとか。

 やっぱり大事なのは、土壌ですね。

 

 

■ 穴川寄席の話を

 

 さて今回は、「欲」の話です。

 

 やりたいことをとにかく詰め込んだ、穴川寄席「この町を駆け抜ける」の振り返りです。

 

 今回のトリは、私、麻屋鶴蔵です。

 

 

◎ 開演3分前

 

 舞台袖からのぞいた会場は、想像以上の景色でした。

 用意した席が足りないほどの入り!50名から60名くらいのお客様がいらっしゃったでしょうか。

 

 嬉しさと同時に、不安も膨らみます。

 

 そんな中、隣の真蔵さんが一言。

 「私達は、もうこの会場のキャパに収まらないですね。」と冗談交じりに笑っていました。

 

◎ 演者の登場

 

 

 まずは、浮世亭楽狂さん『権助魚』

 

 発声や所作、間の取り方まで、全てがキレイなので、どんな噺でも笑いを取ります。

 千葉大学落語研究会という、土壌の良さも感じました(笑)。

 

 彼女の刻む心地よいリズムにお客様が呼応し、会場がホクホクに出来上がっていきます。

 

 

 続いて、風呂屋苦沙弥さん『初天神』

 

 正直に言うと、今回の寄席は“とっちらかる”予感がありました。

 なにせリレー落語です。それも創作で。

 

 そんな中で、しっかりと軸を作ってくれる存在が苦沙弥さんです。

 彼の「いぶし銀」の芸が、しっかりと「寄席っぽさ」をもたらしてくれるのです。

 こういう役割が本当に必要なんです。

 

 

 仲トリは、麻屋真蔵さん『芝浜』

 

 今回必要だったのは、「芝浜を仲トリでやってくれる人」「私が作った禁酒条例(上)を仕込んでくれる人」でした。

 この2つの噺が、私のトリ噺「禁酒条例(下)」につながっていくのです。

 

 正直、面倒な役回りです。

 

 それを引き受けてくれたのが、真蔵と愛狂さん。

 

 真蔵さんの高座は見事でした。

 長い噺をテンポよくまとめながらも、登場人物の感情は丁寧にくみ取り、「芝浜」が持つ人情味を味わせてくれました。

 

 そして何よりもマクラ。

 もう何の話をしていたかは忘れましたが、なんであんなに盛り上がるのでしょうか。

 

 あれが、力なのだと思います。

 


 

 

 仲明けは、田原かいようさん『ギター漫談』。

 

 かいようさんは、ふくぶくろの寄席に初登場です。

 

 ああ、ブログを書いている今でも、かいようさんが奏でる心地よいメロディーが聞こえる気がします。

 

 決め台詞の「それでも陽は登る。」

 

 笑いだけではなく、前を向いて進んでいく力をくれる芸。

 舞台袖で聞いていた私は、「私もそんな落語ができたらな」と感じておりました。

 

 ヒザは女難亭愛狂さんで『禁酒条例(上)』。

 

 寄席のちょっと前の話です。

 

 この噺は、そのまま私が披露する「禁酒条例(下)」に繋がっていきます。

 だからこそ、お互いが演じる世界観がずれないようにと、この噺が録画されたデータを送ってくれました。

 

 私のわがままに、真剣に向き合ってくれる優しさが沁みました。

 

 私の演出は残していただきつつも、独自の解釈やくすぐりも加えた「愛狂流」の落語をたっぷりと楽しませていただきました。 

 

 そして、私。

 

 『禁酒条例(下)』

 

 今回やりたかったのは、次の3つです。

 

・創作リレー落語

・現実と落語世界の融合

・エンディングでの寄席の振り返り演出

 

 すべてを詰め込みました。

 

 結果は、

 

 正直、賛否両論でした。

 私自身も、「やりすぎちゃったかな」と思うところもありました。

 

 

◎ 帰りの電車の中で

 

 ちょっと複雑な気持ちで帰りの電車に乗っていた時のこと。

 

 後輩が私に声をかけてくれました。

 ステキな演出だった、と。

 

 嬉しかったですね。

 

 本当の寄席のハイライトは、あの瞬間だった気がします。

 

 

■ 寄席を終えて

 

 今の私は、「まだまだ「禁酒条例(下)」を磨きたい、もっとよくできる」という気持ちに溢れています。

 

 なんて、欲深いのでしょうか。

 でも、その欲があるから、次に進める気がします。

 

 そういえば、タケノコは収穫してすぐが一番ウマいそうです。

 時間が経てばたつほど、固くなっていきます。

 

 これから、私が向き合っていくものは落語。

 

「なんだ、創ってすぐが一番ウマかった」

 

 そうは、言わせないために、もっともっとこの噺を磨いていきます。

 

※おまけ

 打ち上げで、愛狂さんのお誕生日をお祝いしました。

 この写真は、誕生日プレゼントのウイスキーの値段を聞いて驚いている愛狂さんです。